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電磁波疫学調査 最終結果出る
 
   
   
   

4mgで小児白血病二・六倍 〜文科省は政治的悪評価を行う〜

電磁波問題市民研究会
 

日本初の全国疫学調査一月二八日、文部科学省は「平成一四年度科学技術振興調査費中間・事後評価報告書」を公表した。これは科学技術振興調査費を使って研究した平成一四年度の三二課題についての評価報告書である。
三二課題の一つが「生活環境中電磁界における小児の健康リスク評価に関する研究」で、内容は、全国規模としては日本で初めての電磁波の人体影響を調べた疫学調査研究である。
この研究は一九九九年度から二〇〇一年度までの三年間で七億ニー二五万円をかけ、当時の科学技術庁が旗を振って行なわれた。電磁波には極低周波と高周波がある。送電線や電化製品から出るのが極低周波で携帯電話から出るのが高周波である。今回の研究は極低周波を扱ったものである。
二〇〇二年八月二四日付の朝日新聞が一面トップで扱った「電磁波、健康に影響」記事はこの研究の中間解析報告である。その最終結果ということで発表前から関係者の間で注目されていたのである。




■どういう調査か?
疫学とは人の集団を対象に「発生した病気」と「病気の原因と考えられる要因」との関連を統計学的に分析する学問だ。
喫煙と肺がんの疫学調査は有名だが、タバコを吸う人と吸わない人の肺がん発生率を見て「肺がんの原因としてのタバコ」と推定していくのだ。
約七億二千万円かけた今回の疫学調査は総本部がつくば市の国立環境研究所で、調査中央事務局を東京の国立がんセンターに置いた。そして全国二四五病院の協力を得て、三年間(実質二年三ケ月)で発生した○歳から一四歳までの白血病患者一六〇〇人をまずリストアップした。
次に一六〇〇人の患者(症例)一人につき年令・性別・人口規模で対応する一〇人の健常児(対照)をあらかじめピックアップする。これは住民基本台帳から抽出した。そして症例と対照のそれぞれの家に出向き、磁場等を測定し、かつ母親を中心に一〜二時間面接調査をするのだが、これらをすべて実施すると予算がオーバーするので、全国を「北関東ブロック」「南関東ブロック」「関西中部ブロック」「中国・四国ブロック」「九州ブロック」の五ブロックに分け、調査対象地域(キャッチメント)を特定した。
小児白血病は一〇万人に三五人の割合で発症するまれな病気だ。そのため全国に症例は散らばっており、調査の効率性から地域を特定したのである。キャッチメント・エリア内に症例の五三%が住む。 
磁場測定は一週間連続で子供部屋で行なうし、面接調査も詳細なものである。そのため最終的に調査を承諾しかつデータも完全にとれたのは、症例が三一二人、対照が六〇三人でこれは英国NRPB(放射線防護局)、米国NCI(国立がん研究所)に次ぐ世界第三位の規模の調査である。
疫学調査の場合、選択バイアスと交絡因子の排除が精度の鍵となる。調査対象の選択の段階で研究所の予想した結果になるよう介入すればバイアス(偏り)がかかり、調査結果の信頼度は落ちる。
交絡因子とは例えば喫煙・飲酒・有害化学物質曝露などで、調査したい因子(電磁波)とは別の因子が影響すれば真の因子は特定しにくくなる。現実の生活環境は複雑である。このことが研究室実験と違う、実生活を対照とする疫学調査の困難性となっている。



■一週間測定と訪問調査
訪問調査は子供の母親を中心に、直接訪ねて一〜二時間インタビューするのだが、質問項目は
・人口学的属性 ・妊娠開始時点からの転居歴 ・居住家屋の構造
・母親に関して・・・妊娠期間中の殺虫剤等使用 ・喫煙 ・飲酒 ・労働 ・有害物質の使用
・薬物使用 ・電気機器利用 ・線検査等 ・自然流産歴等 ・父親に関して・・・職業歴
・有害物質等の使用歴 ・子供に関して・・・小児ワクチン歴 ・殺虫剤使用歴 ・電気機器使用歴等

と詳細である。
交絡因子の実態を知るためである。住居の磁界測定の内容は、まず子供部屋で一週間の連続測定を行かう。これは三〇秒間隔で測定する。ポイント測定といって子供部屋の中央と子供の睡眠時の頭部位置・子僕が毎日最も長く過ごす部屋を測定する。
他に一戸建てタイプでは敷地の四隅、集合住宅では玄関ドアの前で五分間測定を実施。高圧送電線が家から五〇〇M以内にある場合はレーザー光線で直接距離を正確に測った。電磁波の測定だと対象者に知れると選択バイアスがかかる恐れがあるので・ブラインド″状態にするためラドンやベンゼンの濃度測定もした。
また自然放射線も測定した。世界にみてこれまでは英国NRPB(放射線防護局)の「二四時間/四人時間測定」が最長だった。したがって日本の一週間測定は世界最長となる。こうして一人当たり一〇万件のデータを集めるという大がかりな調査となった。



■小児白血病リスク四mGで二・六倍
 調査結果は、小児白血病の発症リスクが四mG(ミリガウス)で約二.六倍と出た。この数値は統計的に有意である。疫学調査は人間の環境条件は複雑多岐なため、他の要因も考慮し「相対危険比(PR)」として誤差が生じることを前提とする。
 誤差は五%以内に抑えた「九五%信頼区間(CI)」をクリアした場合「有意」つまり統計学的に意味があるとする。今回の日本の疫学調査は有意とされ、信頼のあるデータと出た。
 さらに今回の調査ですぐれているのは新規症例をつかんでから調査までの期間が平均一・一年と短いこと、そして症例と対照の測定時期も約二.六日と短いことだ。
 米国NCIは新規症例と調査までの期間が平均二年かかった。期間が短いとデータの信頼度はそれだけ上る。夏に症例を調査し冬に対照を調査すれば、季節変動要因が作用するからだ。




■文科省の「政治的判断」
これだけ優れた所のある疫学調査に対し文科省が下した評価はひどいものだった。評価項目は総合評価・目標達成度など全部で一一項目あり、評価はa、b、Cの三ランクに分れる。文科省が下した評価は一一項目すべてでランクCだった。ランクCは項目により表現は異なるが「優れた研究ではなかった」「不適切だった」「不十分だった」という評価だ。評価メンバーは一三人だが一人を除いてみんな電磁波や疫学に明るくない人たちである。おそらく官僚の下書きに沿って評価したのであろう。
この結果、今後同様の疫学調査は打ち切りとなった。「界は予防原則に向かう。
二月二四日〜二六日、ヨーロッパのルクセンブルグでWHO(世界保健機関)が国際会議を開き、電磁波に予防原則で対処することを正式に決めた。「予防原則」とはリスクの証拠が未確定でも将来リスクの影響がありえる時は事前に予防対策をとるということだ。予防原則の採用となれば基準値は厳しくなるであろう。WHOは現在、極低周波と高周波の二つの分野で二〇〇五年をメドに新しい環境健康基準をつくろうとしている。極低周波の基準は今年度中に出、高周波の方は二〇〇六年に出ると予定されている。
今回の日本の疫学調査もこうしたWHOの動きから要請されて実施したのである。現在、今回の疫学調査内容は国際科学誌に投稿中である。もし掲載されればそこで国際的評価は確定し、文科省のひどさも明らかになる。一刻も早く日本政府が予防原則を採用し、電磁波規制に乗り出す事を求めたい。

   
   
   
     

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