ブラックバス


 
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【ブラックバス問題】レポート


 
   
 
 
2001年6月16日(土)、横浜市開港記念会館において、神奈川県職員労働組合研究職場協議会主催の、第1回公開講演会が開催されました。協議会議長も含め、5人の先生方によって講演がなされましたが、その中から「日本魚類学会自然保護委員会の瀬能 宏氏(生命の星・地球博物館)」が取り上げた「ブラックバス問題」について、講演内容の要旨を資料としていただきましたので、瀬能氏了解のもと、掲載させて頂きます。



◆ブラックバス問題とは何か?◆

〜生物多様性と経済論理の狭間で〜 瀬能 宏(神奈川県立生命の星・地球博物館)

最近、新聞やテレビでブラックバス問題が盛んに報道され、世間を大いに騒がせている。ブラックバスはルアーフィッシングの対象として絶大な人気があり、コミックやゲームにまで登場する魚だが、一方では在来の水生動物を大量に捕食し、生態系に大きな影響を与えると言われている。つまり、経済効果や享楽の観点からブラックバスを積極的に利用し続けたい人たちと、自然保護の観点からブラックバスが日本にいることはよくないと考えている人たちの間でもめているのである。だが、ブラックバスがそうした悪影響を与えるであろうことは、最初から予測できたことであり、大多数の研究者が認める世界の常識である。では、今なぜブラックバスがこれほど問題にされているのだろうか?

◆ブラックバスとは
ブラックバスとは北米原産の淡水魚で、スズキ目サンフィッシュ科オオクチバス属の魚の総称、あるいはオオクチバス属のオオクチバスの別名であり、一般的には前者の意味で用いられることが多い。オオクチバス属には6種が知られているが、そのうち日本に持ち込まれたものはオオクチバスとコクチバスの2種である。ブラックバスと同時によく引き合いにだされるブルーギルは同じサンフィッシュ科の魚だが、こちらはブルーギル属に分類されている。ブラックバスの代表格であるオオクチバスは、成長すると全長30〜50cm(最大で70cm)に達し、在来の日本産淡水魚と比較すると相当に大型の部類に入る。そして、魚類や甲殻類など様々な水生動物を食べる肉食性の魚でもある。

◆日本への導入
オオクチバスが日本に移殖されたのは1925年、神奈川県の芦ノ湖に80尾が放流されたのが最初である。なぜオオクチバスに白羽の矢がたったかと言えば、食用や釣りの対象として有益であり、そこから副次的に利益が得られると考えられたからである。導入当初からその食性が在来の水産重要種へ与える影響が懸念されたが、その有益性故に県外からの移殖希望が絶えなかったという。1930年に長崎県の白雲の池を皮切りに、山梨県山中湖(1932年)、群馬県田代湖(1935年)、兵庫県峯山貯水池(1936年)などに試験的に移殖放流された。

◆ルアー釣りのブームとともに横行するヤミ放流
1970年代、手を汚すことのないルアー(疑似餌)に専用のリールを備えたスマートな釣り竿、キャッチアンドリリースといった釣りスタイルのファッション性が人気を呼び、ルアーフィッシングブームが巻き起こる。このブームに呼応するかのようにブラックバスの分布は急速に拡大していく。全国内水面漁業協同組合連合会の調査によれば、最初に放流された1925年から1964年までの約40年間で、オオクチバスの分布はわずか5県にとどまっていたが、1965年から1969年までの間に11府県、1970年から1974年までの間に23都府県、1975年から1979年までの間に40都府県にまで拡大した。1985年には賞金制のバスプロ・トーナメントが山梨県の河口湖を中心にスタートした。1991年にはオオクチバスよりも流水や冷水に適応しているコクチバスが長野県野尻湖で初確認される。この種の分布については1997年には8都県、1998年には14府県、そして2000年には27府県とすさまじい早さで広がったのである。陸づたいに移動できないはずの魚がなぜこれほどまでに急速に、そしてほぼ日本全国に広まってしまったのだろうか?これまで知られている状況証拠の多くは、ブラックバスの拡散が釣り人、あるいは釣りの関係者により意図的に行われたものであることを示してる。後述するように、ブラックバスを許可なく移殖放流することは条例で禁止されており、違反した者は処罰される。また、放流を禁止する条例がなかった時代であっても、肉食の大型魚を日本の河川や湖沼に放流する行為が社会的に受け入れられたかどうかは疑問である。こうした背景があるため、ブラックバス釣りは犯罪、あるいは反社会的な行為の上に成り立っていると言えるのである。

◆ブラックバスを規制する動き
1992年、水産庁は内水面漁業調整規則を改正し、ブラックバスやブルーギルの移殖放流を制限するよう通達を出した。現在では沖縄県を除くすべての都道府県で許可なくこれらの魚を放流することが禁止されている。最近では新潟県や岩手県など、まだ少数ではあるが、釣り上げたブラックバスの再放流を禁止するところも出てきている。だが、違法に放流されたものであっても、放流された魚自体は民法上無主物にあたるとされ、それを釣る行為自体は合法である。こうした「やったもん勝ち」の不条理な構図は残されたままである。また、こうした規制の動きへの反発が犯罪につながるケースも出ている。特に昨年の富山県の事例では、自分の釣り場を作ろうとした会社員がオオクチバスを放流して検挙され、これが引き金となって中学生がバスを殺すなと警察などへ脅迫メールを送るという事件にまで発展した。ブラックバスが抱える問題は、単に法律で規制するだけでは解決できない難しさを実感させられる。

◆水産庁のゾーニング案とは
オオクチバスが漁業権魚種に認定され、合法的に繁殖保護が行われている水域は現在4カ所(神奈川県の芦ノ湖、山梨県の河口湖、山中湖、西湖)しかない。だが現実にはほぼ全国的に分布しており、もめ事が耐えない現状を打開するため、2000年11月、自民党水産部会水産基本政策小委員会において、水産庁はいわゆる「ゾーニング案」を提出した。この案の骨子はオオクチバスの規制を緩和し、漁業権魚種に認定して積極的に利用する水域とそれ以外の駆除する水域に分けることである。だが、生物多様性保全の視点が欠如しており、有効な駆除策や効果的な違法放流の防止策が示されていなかったため、委員会の委員から反対されただけでなく、翌年2月には魚類学会をはじめとする多くの自然史系の学会からの反対にあい、結局のところ法案化は見送られた。

◆生物多様性保全に向けて
1993年に日本は生物多様性条約を批准し、1995年には生物多様性国家戦略を策定した。生物多様性とは、種内の多様性、種間の多様性、生態系の多様性という3つのレベルで理解されている。生物多様性が高いということは、いろいろな種がいて、それぞれの種は地域ごとに少しずつ違っており、そうした種が相互に関わり合って複雑な関係を保っているということである。こうしたことは、一朝一夕にできあがったものではなく、長い時間をかけて作り上げられた進化の産物である。人類が地球上の生物の一員として将来にわたり存続していくためには、生物多様性の保全が絶対に必要であると考えられている。多様性が低い環境がもたらす悪影響は、スギの植林と花粉症の例を出すまでもない。

◆私たちがとるべき道とは
川や湖、そしてそこに住む在来の水生生物は誰のものかを考えた場合、ブラックバスの問題が釣り人や漁業者だけのものでないことは明らかである。特定分野の人たちの享楽や経済的利益を優先させて在来の水生生物を犠牲にすべきでないとする考え方は、多くの方々から支持が得られるものと確信している。だとすれば、今我々がしなければいけないことも見えてくるのではないか?「残されている生物多様性を少しでも現状のまま残してやること」が我々に課せられた責務と言えるのではないだろうか?

◆今すぐにできることから始めよう
ブラックバス問題を解決するためにしなければならないことは多い。だが、誰にでも、そしてすぐにでも始められることはある。
1 キャッチアンドリリースをやめて駆除の効果を高める。
2 違法放流(密放流)をみんなで監視し、ブラックバスの拡散をくい止める。
3 在来の水生生物や保全生態学についての知識を専門の研究者が執筆している本などから吸収し、生物多様 性とそ の保全の重要性についての理解を深める。
こうしたことが実践され、さらには目に見える形でその成果が現れた時、ゾーニング案についても議論できる最初のスタート地点に立てるのではないかと思われる。

   
 
 
   

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